幼少期の難病発症と静かな進行 

神奈川県相模原市でバイオリニストとして活躍する野村謙介さん。野村さんは幼少期に網膜色素変性症(RP)という指定難病と診断され、以来、見え方と向き合う日々を送ってきました。 RPは目の内側を覆っている網膜に異常をきたす遺伝性、進行性の病気です(※1)。 

20歳頃までは専門医のもとで進行が極めて緩やかに抑えられ、教員としての職務や音楽活動をこなせていた野村さんですが、40代半ばから病状が急速に進行。視野欠損と視力低下が急激に進み、白内障手術を経てもなお、徐々に視界は閉ざされていきました。

 奪われていく視界と「夜」への恐怖 

現在の野村さんの視力は、右目はわずかに光を感じるのみ、左目も矯正視力0.04で「明るいか暗いか、強いコントラストで輪郭がわかる程度」です。主治医からも「いつまで見えていられるか分からない」と言われる状態で、常に心の中にあったのは「この先、完全に暗闇になったらどうしよう」という強い不安でした。 

「目が見えなくなる不安の中で生活する——それは健全な方にはなかなか理解しづらい感覚かもしれません。」と野村さんは話します。 
例えば昼間に「16時までは明るいから大丈夫」と出かけても、アクシデントで帰りが17時になると急激な焦りと強烈な不安に襲われることも。若かりし頃、駅から自宅までの真っ暗な夜道を懐中電灯ひとつで怯えながら歩いていた記憶は今も忘れられないと言います。 

衝撃の出会い——暗所視支援デバイスの試作品に感動 

そんな野村さんが暗所視支援デバイス開発チームに出会ったのは初代モデル(MW10)の開発初期。試作品を装着し、照明を落とした会議室で目を開けた瞬間の感動を、熱く語ってくれました。 

 「あ、床のカーペットの模様が見える。 

向こうの箱に書いてある文字も読めます。 

・・・皆さんの顔がそこにあります!」 

裸眼では「完全な漆黒」だった空間に、突如として輪郭と色彩を持った世界が現れました。 

「ずっと目を閉じていた人間が、初めて目を開けた時と同じ感覚でした。幼い頃から『暗い場所では物が見えにくいのが当たり前』と思って生きてきた自分にとって、暗闇の中で景色が見えるというのは、人生で初めて体験する全く新しい世界だったのです」 

新モデル「MoonWalker(MW)」が叶える、新たな自由 

初代からMWシリーズを愛用する野村さんにとって、新製品「「MoonWalker(MW)」への進化は目を見張るものでした。 

視野と明るさの飛躍的進化 

縦方向のディスプレイ拡大により上下の視界が劇的に改善。足元のものを探す際に何度も首を振る必要がなくなりました。さらにコントラストが強調されたクリアな映像により、「昼間の裸眼よりハッキリ見える」ほどの見えやすさを実現しています。 

日常に馴染む軽量・洗練デザイン 

重量軽減に加えコントローラーも大幅に小型化。見た目も街中に溶け込む「サングラス」に近づき、「機能を上げながら日常へ落とし込む開発陣の血の滲むような努力が伝わってきた」と野村さんは語ります。 

日常と仕事——「MoonWalker(MW)」が活躍する現場 

「MoonWalker(MW)」によって、野村さんは生活の様々な場面で「安心」を取り戻しています。 

・コンサートや撮影の現場:照明が落とされたホールや舞台袖でも、機材操作や移動がスムーズに行えるように 

・暗いトイレという難所:近年のホテルやレストランに多い間接照明の暗いトイレでも、同行する奥様の手を離れ一人で安心して利用できるように 

・友人の「顔」が見える喜び:街や会場で会った際、声を聞かなくても自分から「ああ、〇〇さん!お久しぶりです」と笑顔で声をかけられる幸せを取り戻せた 

「作り続けてくれて、ありがとう」

「お世辞抜きで、こんなものを未だに作り続けてくれてありがとうございます、という言葉に尽きるんです。見えている人間が見えないつもりになってモノを作るのって、一番難しいはずですから。僕が遠慮なく『ここがダメだ』と言い続けるのは、作っている人の心に火をつけて、もっといいものにしてほしいから。開発者である内海さんたちの、その職人魂のような意地が、痛いほど伝わってくるんですよ」

「MoonWalker(MW)」の購入を躊躇している方へのメッセージ 

同じ病の患者さんへ向けて、野村さんは想いを語ってくれました。 

「仮に1日、1ヶ月、1年であれ、これまで諦めていた『夜見える生活』を取り戻せるなら、その時間はいくらお金を出しても買えない、貴重な体験になります。完全失明の不安の中で過ごすのではなく、見える世界を1日でも長く楽しむこと——それこそがQOL(生活の質)を高めることなんだと思います。」 

いつか病気が根本治療できる時代が来るまでの「時間稼ぎ」だとしても、 
私たちはMoonWalkerによって患者さんの人生を、少しでも物理的・精神的に支えていきたいと思います。