オートフォーカスアイウェア ViXion01

ViXion01

ViXion01 開発者の声

ViXion01|story of development

常識に捉われない柔軟な発想が
多くの人の“見える”を取り戻す

内海 俊晴

取締役/開発責任者

Q.ViXionでは、夜盲症の方のために開発した「MW10」に続く新たなアイウェアとして、多くの方の“見える”を引き出す「ViXion01」の開発を進めてきました。新製品「ViXion01」はどのようなアイウェアなのでしょうか?
A.ViXion01は、目の酷使や加齢に伴う見え方の課題解決をサポートするもので、私たちはメガネ型ウェアラブルデバイスと呼んでいます。そもそもの開発のきっかけはMW10の体験会なんです。当時、MW10の性能を体験してもらおうと、私たちは全国の視覚障がい者の方たちの協会や団体などに伺いました。その中のある盲学校で、私は単眼鏡を使って遠くの黒板や近くのノートを見て学ぶ子どもたちの姿を目にしたんです。それはとても不便そうでした。でも、残念ながら、今の眼鏡のレンズでは、その子どもたちの見え方をサポートするには限界があります。そこで、私は『次は弱視の方たちが便利に使えるものを作ろう』と思ったんです。
Q.「ViXion01」のもっとも大きな特徴はオートフォーカス機能ですが、具体的にはどのような機能なのでしょうか?
A.オートフォーカス機能は、中央部に取り付けた距離センサーが対象物との距離を瞬時に計測し、それに合わせてレンズの膨らみを変えることで、ピントを自動調整するものです。遠くが見えにくい、逆に近くが見えにくい、またはそれらを組み合わせた見え方や、時間帯によって見え方が異なる方に、その都度、適した見え方を提供します。基本的には補助用としての使用を想定していますが、模型を組み立てたり、小さな文字を読み続けたり、細かい作業を継続的に行う方には特におすすめしたいです。実際に着けていただけると、その見え方にきっと驚かれると思いますよ。
Q.そのオートフォーカス機能の開発には苦心されたとお聞きしていますが、開発までどれくらいの期間がかかったのですか?
A.製品化しようと思ってから2年くらいですね。でも、その2年は私たちの中では早くできた方かなと思います。というのも、当初はオートフォーカス機能を付けるのは難しいだろうと思って、マニュアルモードだけの操作を考えていたんです。ところが、試作品を見ていただいた方から『自動でピント調整ができたら便利だ』という声が寄せられて……。技術者として、多くの方に使っていただくためにも、これは実現しなくてはと思って、かなり頭を捻りました。
Q.眼鏡業界でも類を見ない画期的なアイウェアだと思いますが、実現できた要因はどこにあるのでしょうか?
A.私たちが調べた限り、ViXion01と同じような機能を持つ製品は世界中を探してもありません。それほど画期的なんですが、そもそも私には業界の常識というものがなくて(笑)。長らく半導体の電子回路の設計に携わっていて、眼鏡のレンズ開発は全くの素人なんですよ。試作品を作るきっかけとなった部品も、たまたま眼鏡とは全く異なる業界の展示会で見つけたものですから(笑)。でも、逆にそれが良かったんだと思います。常識に捉われることなく、こうしてチャレンジすることができましたし、もしかしたら、業界の方の中には『ああ、こういう方法があったのか』と気づく方がいるかもしれないですよね。
Q.最初の製品「MW10」に引き続き、デザインは世界を舞台に活躍するデザインオフィス「nendo」が手がけていますが、デザインに関してリクエストしたことはありますか?
A.私はデザインに関して基本的に口を挟まないようにしているんです。ただ、構造上、どうしてもできない部分があれば意見を交わしますが……。技術開発者の基本は、デザイナーの感性を信じて意図を汲み取り、それが本当に作れるのか、また壊れないのか、コストを含めて考えていくことだと思っているんです。試作品は周りから『カエルみたいだ』とよくいわれていましたが(笑)、完成品は近未来的でかっこいいデザインになったなと思います。
Q.「ViXion01」の開発も終わり、今はほっとされていると思いますが、次はどのような製品を開発したいと思っていますか?
A.子どものころの話に遡るのですが、私の田舎では祖父のことを“ずっつ”というんです。私の“ずっつ”は右手が不自由だったので、小学生のころ、身の回りにあるものを使って、簡単にキセルに火が点けられるものを作ったことがあるんです。それを見た“ずっつ”は泣いて喜んでくれたんです。そのとき、自分が作ったもので喜んでくれる人がいることが、子どもながらにとても嬉しかったし、誇らしかった。それが私のものづくりの原点になっているんです。だから、今も私の元に寄せられる相談事を一つひとつ分析しながら、これからも目が見えづらい方の動作を補助するアイウェアや、健康管理、目の病気の予防に繋がるようなアイウェアを作っていきたいなと思っています。