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2024.03.26

ViXion01ユーザー紹介:文具王・高畑正幸様「未来の普通には無理して今乗れ」

ViXion01の最初期の体験会に参加し、すぐに購入してViXion01を使い続けている文具王こと高畑正幸さんにここまでViXion01を使い続けての話を聞きました。

ViXion01の目に関する技術の話から「未来の普通」というキーワードまでいただきました。以下、文具王のViXion01体験の最初から最近使い方までの話です。ぜひ、最後までお楽しみください。

ViXion01の体験会の感想、ViXion01を注文した理由

ViXion01の存在については、SNSで見たのが最初だと思いますが、とにかく、そのコンセプトを見た瞬間にかなりイケてるというか、ピンと来るものがあって、とにかく、これは体験してみたいと思いました。

昨今、視覚系のデバイスが様々に発表される中ではViXion01はちょっと異質というか、コンセプトが全く違っています。ほとんどの視覚系デバイスが、リアルにせよバーチャルにせよ、情報をなんらかの方法で一旦デジタイズして、ピクセル化したものを液晶画面等に再構成して表示して見せているのに対して、ViXion01は、端的にいうとオートフォーカスのメガネであって、その役割も仕組みもいたって明瞭です。

レンズの焦点距離を可変させる技術については不明ですが、眉間にあるセンサーで距離を測ってその距離に応じて電気的な仕掛けによってレンズの焦点距離を変えているものなので、像にピントが合う。ただそれだけです。やっていることがとても単純でわかりやすいのがいいところ。未来の夢というよりは、目の前の切実な問題に正面から答えるタイプの提案で、使っている自分が容易にイメージできる。考え方がシンプルで、スジが良いなと思いました。

おりしも、私自身、ここ数年で老眼が急速に進行し、目のピント調節機能の衰えを日に日に感じるようになってきていて、最近は、跳ね上げ式の遠近両用眼鏡を常用するようになってきたところです。まさに当事者として、見る事の不便を感じていたタイミングに、この発表。気にならないわけがありません。

これはもう是が非でも触れてみたいというのがあったので、体験会に参加しました。体験会で実際かけてみて、まだ発展途上であるというのは百も承知の上で、これはここから普及する製品の最初の一歩だということに確信が得られたので、すぐに注文しました。

ViXion01の何が良かったのか?

私のモットーは「未来の普通には無理して今乗れ」です。

数年後、この技術は、誰もが使う当たり前の道具になっているか、それとも、物好きの玩具だったと忘れられるか、どっちだろうか、それをいつも考えることにしています。そしてそれが前者であって、かつ自分がその対象となる未来のユーザーであるならば、多少の無理をしてでも、なんらかの形でその技術に触れるように心掛けています。

では今回のViXion01はどうか、これはかなり強く「未来の普通」を予感させてくれるデバイスです。体験会でかけた数分で、驚きと喜びがあり、将来自分が使っているところが想像できました。この感覚は、自分が中学生のころ、徐々に進行した近眼に対して、はじめて眼鏡屋でレンズをはめた仮組メガネをかけて店の外の街を見た時に、こんなに世界って綺麗だっけ、って思ったのと同じような感覚がありました。これまで徐々にピントが合わなくなってきてたのだなというのを一気に自覚してしまうというか、シームレスにピントが合う感覚っていうのにえもいわれぬ嬉しさが沸いてきました。

誤解のないように説明したいのですが、私が言っているのは、そのときかけた試作品を日常で使えると思ったわけではありません。残念ながら試作品は視野が狭く、メガネの代用にはなり得ないものでしたし、現在手元にある完成品でも、まだ普段使いというには課題が多いです。しかしそれは、単に製品としての洗練の問題であって、「どこを見てもピントが合う眼鏡」の本質は既に完成しているし、それを実際に体験するだけの完成度には仕上がっています。あとはここから多くのユーザーが実際に手に取って使用しながら得た知見をフィードバックして改良していくことで、洗練されていくのは容易に想像できます。そして、この製品が実現しようとしているのは、目の前の世界をはっきり見たいという、人類共通の実にシンプルで切実な願いです。これほど強烈な動機はありませんから、あらゆる意味で加速するのは間違いないと見ています。

ViXion01をしばらく装着しての感想

自分の環境でしばらく装着してみての感想としては、やはり何よりの驚きは、当たり前ですが、どこを見てもピントが合っているという驚きです。

老眼になると、普段自宅で作業していて、PC画面と手元のノートを行き来するだけでもどちらかはピントが合わなかったり、商品撮影するときなんか、被写体とカメラの液晶画面の間で、20センチぐらいの至近距離から、1メートルぐらいの間を行ったり来たりしていて、距離は全然違うわけです。だから、毎回跳ね上げ式メガネをパカパカやっているわけで、とにかく自分は、この間には、1枚のレンズではどうやっても補完できないズレがあるわけです。それを、このViXion01は関係なく、どこでもピントを合わせてくれる。これは本当に凄い。しかも自分では何もする必要が無いので、見たいところに顔を向ければ見える。それだけです。

視力に問題のない人にとっては、ごくごく当たり前のことですから、感覚的には理解するのが難しいと思いますが、手元でも窓の外でもピントが合っているという状態の快適さを再び感じる事ができたというのは、本当にそれだけでちょっとした感動なのです。

ViXion01は調整が簡単

ViXion01の利点の1つは、最初の調整が必要とはいえ、普段使う上では、充電以外にはまったく何もしなくていいところです。道具としてすごく良いインターフェイスだなと思います。本人が調節できなくても、最初に誰かが一緒に合わせてあげられれば、本人には知識も技術も必要ない。しかも調整には専門的な設備や知識がほとんど必要ないので、眼鏡屋に足を運んだり、できあがりを何日も待たされることもない。箱を開けたその日に自分で調整して使えます。このすぐに使える嬉しさは、既に眼鏡を作ったことのある人なら共感して頂けると思いますし、たとえば災害時などにおいては応急の眼鏡としても機能する可能性もあります。

そして実際に手に入れて面白いと思ったのは、ViXion01の体験を、簡単に友人や知人にも共有できることです。所有者は、友人や知人にその場でちょっと貸してあげて調整のしかたを説明するだけで、実際の使用感を体験してもらうことができます。このクチコミに強い性質はおそらく今後の広がりにとって重要な特性だと感じます。

また、実際どの程度影響があるか、私には分かりませんが、ViXion01の凄いところは、完璧に調整された状態なら、原理的には目のレンズを引っ張ってピントを調節する筋肉を使う必要がそもそもないということです。これは、もしかしたら、ある種の人にとっては、眼の疲労が軽減される、あるいははじめてピントの合った像を見られるという可能性もあろうかと思います。

ViXion01は案外軽くて長時間使える

ViXion01は重さが55g。フル充電で約8~10時間の連続使用が可能。これについては、すでにかなりイイ感じです。私が普段かけているメガネが34gあるので、電池やらなんやらを全て含んでの55gは、十分に実用レベルと言えるでしょう。昨今流行のVRゴーグルとは比較にならない程軽い。実際にアイウエアとして常用することを考えると、この軽さはかなり重要ですし、これのおかげで、連続使用時間の8時間というのも、現実的に意味を持ちます。

やっぱり視野はちょっと狭い

残念ながら、やはり視野の狭さは指摘せざるを得ません。現状最大の弱点ではあります。どのぐらいの印象かというと、だいたい、うちわを持った手をまっすぐ前に出したときのうちわの面ぐらいが見える範囲です。広くはないですね。

左右の眼がそれぞれに少し小さな丸い視野を持ちますが、上手に調整してやると、1つの円として感じる事ができます。潜水艦の潜望鏡から見た感じでしょうか、普段周辺視野でなんとなく見えている所が狭くなり、眼球の向きを変えるとこの視野から外れてしまうので、見たい部分が視野の中心に来るように頭の向きを動かしながら見る必要があるので、眼を動かさずに首で見たいものを探します。やはり少し不便ですし、慣れも必要です。

小さなものにはピントが合わせにくい

これは、オートフォーカス系のデバイス全般の弱点で、センサーは眉間の所にあり、正面を計測しているわけですから、そのセンサーの真正面に物がないと反応しません。PCのモニターや本など、ある程度大きさがあるものを見ているときにはそこにピントを合わせるのは比較的正確にできますが、たとえばプラモデルの部品をピンセットの先に持っていて、それを見る、といった場合には、部品ではなく、その後ろの机にピントが合う場合が多いです。こういった状況は比較的多いと思われますので、今後の課題かもしれません。もちろん現状でもマニュアルモードで対応はできるのですが、ここの精度がもっとよくなると私の用途ではもっとうれしいです。

テクノロジーは自分の老化の半歩先を行ってほしい

正直なところ、私の老眼はまだ中近両用レンズと跳ね上げ式フレームで何とか乗り切れていますが、やはりこれから先、歳を重ねるにつれて、複数の眼鏡を掛け替えたりする必要がでてくるのはほぼ確実で時間の問題です。そうなると様々な面倒が発生することは避けられませんから、その時点での選択肢の1つとして、ViXion01のようなオートフォーカスアイウエアが登場したというのはまさに福音です。

現時点でもかなり高い完成度ですが、この先数年のうちには、もっと自然に使えるメガネになっていることでしょう。SF好きというのもありますが、テクノロジーが自分の老化に追いついてきたという実感は、ほんとうにうれしいものがあります。

視覚系を補助するということの意味

大学院の時は視知覚系の心理学を扱う研究室にいましたが、人間の眼球のシステムって、網膜に像が写ってからの画像処理は非常に複雑ですが、網膜よりも前の部分は案外シンプルで、基本的にはカメラとほとんど同じです。近視や遠視や乱視や老眼で、メガネやコンタクトを使っている状況のほとんどはもう、いかにして網膜上に正しい象が投影されるようにするかという純粋に光学的な問題です。だからこそメガネやコンタクトレンズって、これまで人類が実装できた数少ない補助装置の中で、歯の補綴と並んでもっとも普及してきたものと言えるでしょう。

しかも、レンズの発明によって、人類は、本来見えるはずのないミクロの世界や、超遠距離の物を見ることが可能になったばかりか、その補正能力のおかげで、歳をとっても世界を観察し、本を読み、考えることが可能となり、専門的職業を持つ人の知的生産が可能な期間がほぼ倍増したと言われています。メガネがなければ、科学や数学や思想の進歩はもっとずっと遅かったかもしれません。メガネの原理そのものは数百年前から、基本的にはほとんど変わっていないわけですが、スマホのカメラだってオートフォーカスなわけですから、そろそろメガネもレベルアップしても良さそうに思いますね。

ViXion01の値段は決して高くない

99,000円って、デジタルガジェットだと思うと高く感じるかもしれませんが、僕みたいに遠近両用でそれなりにちゃんとしたメガネを作ると10万円ぐらいすぐ行っちゃいます。

そう考えれば、そんなにビックリするほど高いわけでもないし、私はメガネとか靴とか、自分が世界と触れる境界部分には多少お金をかけても良いモノを使うべきと考えています。だってせっかく毎日目の前にある世界を美しく見られないなんて、人生損ですからね。

まとめ

結論としては現状のViXion01は「画期的な遠近両用眼鏡のプロトタイプ」です。現状で視覚に問題のない人にとっては全くメリットもないし、体感もできないでしょうし、もちろん購入する意味は全くありません。また単純な近視や遠視であれば、現状なら普通の眼鏡やコンタクトの方が安くて快適です。この製品が本領を発揮するのは、やはりレンズの調節幅が狭くなる、いわゆる老眼です。多くの人にとって加齢に伴うピント調節機能の衰えは避けられないことを考えると、全ての人がユーザーとなりうる可能性を持っているという非常に強力なデバイスだといえます。

現状のViXion01は、製品として販売されてはいますが、今すぐ累進度数メガネに取って代われるほどの状況ではありません。しかし、少なくとも現状ではおそらく唯一の、普通に購入できて日常の中で使用できるオートフォーカスアイウエアだと思われます。視野が狭いとはいえ、状況を限定すれば既に十分実用的だし、一部の視覚障害者にとっては世界を拡げてくれる味方になると思います。

自分の衰えを部分的にでもキャンセルしてくれるデバイスがこうやって開発される時代に生まれて本当に良かったと実感しています。

こうやってあれこれ語ってみたものの、この感覚だけは、やはり体験する以外に知る方法がありません。一般的なレンズとは違って、ViXion01は、その場で調整して試用することも可能なので、興味のある人は、是非体験してみて欲しいと思います。